加速度的に進むオーストラリアの、日常生活におけるシステム合理化
日本の人が一般的にオーストラリアにいだくイメージは、ヒツジが多くのんびりと牧歌的といった所でしょうか?
ある一面ではその通りと言えますが、その裏でシステムの合理化や新しい技術の導入に関しては、日本よりも遥かに進んでいるのではないかと思われます。
私が考えるにその理由は、多民族国家にあると思います。日本なら何か新しいシステムを導入したりするのに、少数派や多数派の意見を取りあえずは広く集めて比較検討などの議論がなされてから、初めて導入となります。いろいろな関係団体からの反対意見などもマスコミで取り上げられたりすると、さらにそのスピードは落ちます。
比してオーストラリアは多民族国家です。思想も文化も全く異なる人々が暮らしていますので、一つ一つ意見を聞いていたら何時まで経ってもまとまらないと分かっているからです。それらを確実に有無を言わさずまとめ上げるのは、法律しかありません。特にシドニーのあるNSW州(ニューサウスウェールズ州)ではその変化のスピードは速く、異議を唱える隙も無いように感じるほどです。
例としていくつか。
1.高速道路の料金所の廃止。
以前は日本と同様に、ゲートもあり料金所で払っていましたが今ではE-tollもしくはE-tagといった装置を車につけておく必要があります。ゲートを通過するとピッと音が鳴り料金が自動的に引き落としとなります。全くスピードを落とす必要はなく、交通の妨げになる事はありません。すべてゲートの上にあるカメラで撮影しているので、もし持たずに走行してしまった場合は指定の番号に電話をしてカードで支払う必要があります。
2.バス運賃の現金廃止。
Opal(オパール)カードという公共交通機関で使えるプリペイドカードが導入されてから、現金での乗車が出来なくなったバスが増加しています。以前はドライバーに直接現金を払ったり、回数券を買ったり出来ました。
3.スーパーのレジ袋廃止とスーパーのセルフチェックアウトの増加。
これは法律での決定事項ではありませんが、大手スーパーはほぼ全て、昨年よりレジ袋の一斉廃止を行っています。導入期間は数か月ありましたが、その後は一切の妥協なく廃止となっています。もし買い物袋を忘れた人は、手で全部持つか店で売っているバッグを買うしかありません。また今や大手のスーパーでは、セルフチェックアウトのレジの割合が70%から90%にも上るところが増えています。ただバーコードのない野菜や果物は直接スクリーンから、名前を探して入力する必要があるので面倒ですし、もし野菜や果物の名前やその種類が分からなければ次に進めません。特に英語の良くわからない移民の人や若い人には一苦労するところです。
実際にはこれらすべてが上手く行っている訳ではありません。特にお年寄りにとっては、急激な変化についていくのは大変な事だと思われます。それは州政府も分かってはいるのですが、慣れというのは凄いものであえて施行することによって、今ではすっかり日常生活の常識として浸透しており、特に不平不満の声を聴くこともないようです。
逆に技術先進国である日本に旅行すると、バスに乗って小銭を両替して時間が掛かったり、カードの使えないスーパーで困ったり、高速道路で近づいてもなかなか開かないゲートにヒヤヒヤしたりと、戸惑ってしまう事も多々あります。