ビジネスとしてカフェを見ると、なかなか厳しい現実が見えてくる。
好きなことを仕事に出来るという事はとても幸せなことだと思います。
ジャズの流れる落ち着いたお店で、渋いマスターがこだわり抜いた豆を自家焙煎。奥様の作った美味しいケーキとのセットが大人気のお店。なんていうシチュエーションにある意味憧れがあります。
ではシドニーでもそういうお店はないのか?と思われるかも知れませんが、次の条件が揃わない限りなかなか実現は難しいと思います。
1.自社ビル、もしくは自社物件に出店。(家賃の心配なし)
2.家族経営(人材確保の心配なし)
3.近隣に競合店が少ない。
では、現実にはどうなのでしょうか?これは実際に統計を取ったわけではありませんが、私の実感として、95%以上は純粋に利益だけを追求したビジネスで、残り5%以下程度がオーナーの趣味と実益を兼ねたものだろうと思われます。なぜなら、次の3点がビジネスを続ける上での大きなネックとなってくるからです。
ネックその1.家主との契約条件
ほとんどの場合、契約期間は5年で終わります。そこから更に5年の延長交渉が出来る場合もありますが、契約書にない限りそれは家主(Land Load)次第となります。通常は契約更新出来たとしても、大きく賃料がアップし更に改築や改装などを要求される事が多いです。また賃料自体も、多くの場合自動的に年4-5%上がっていきます。仮に5%上がるとした場合だと.....
初年度が$10,000の場合
2年目には$10,500
3年目には$11,025
4年目には$11,576
5年目には$12,155にもなってしまいます。
ですが、この家賃上昇分を同様にコーヒーの値段や食べ物の値段に反映させる事は簡単では有りません。コーヒーの値段を、$3.5 - $3.675 - $3.858 - $4.05 - $4.25とすることはやはり現実的ではありません。
更にショッピングセンターだと、自分がその場所で店舗を続けたいと思っていてもショッピングセンター側の都合のみで、場所を半強制的に移動させられることもあります。
ネックその2.人材の確保
これは一番頭を悩ますところです。オーストラリアは人件費が高く、最低賃金でも80円計算で時給約1500円となり更にそこにプラスで会社負担で9.5%の退職年金や、年間でも4週間以上の有給休暇などが義務付けられるので、小さなカフェで人を雇うことはかなりの負担になります。カフェで言うとバリスタやシェフなどの専門職ならさらに時給も上がって最低でも2000円程度は必要です。なので、少しでも人件費を抑えるために、留学生やワーキングホリデーを雇うとしても、人の出入りも激しく、数週間から数か月でスタッフもガラッと変わってしまうのが普通です。なので常にだれか新しい人をトレーニングしていると言った感じです。
ネックその3.競合店
言うまでもなく競合店の出現は脅威です。そしてその数が多ければ多いほど熾烈な競争になるのは当然です。シドニー市内は特にカフェの数も多く、私のカフェの半径200m以内だけでも、軽く20軒以上のカフェがあります。そして新しいカフェが出来ると、行ってみたくなるのは、お客さんの当然の心情です。そこからまた戻ってきてもらえるようにするには、また新しいメニューなり、新しいシステムの導入などを常に行っていく必要があります。一度失ったお客さんを取り戻すのは大変な努力が必要ですし、新規のお客さんを取り込むのも、またコストもかかるものです。
実際には毎年上がり続けるコストに対応して、売り上げも上昇していくのなら何も問題はないのですが、上記の3つのネックがあるせいでなかなかそれも難しいところです。なので、カフェを続けていくには自分の趣味や信条はさておき、冷静に利益を追求していく必要があります。